僕はロマンティックな男だ。だからいつも損をする
コーマック・マッカーシー「ザ・ロード」読了。終末後の世界を旅するエスエフでも「吸血鬼」とか「地獄のハイウェイ」なんかの古典が孕んだのんきさが微塵もないのは流石いまどきの作品で、さらに「渚にて」みたく人類が尊厳を保って死滅するのはいまやナンセンスらしくて寂しい気分になる。全編まったく高揚のない筆致は魅力的。でも世評ほど面白いとは思わなかった。
平井和正「虎は暗闇より」読了。本邦のエスエフにしては気の利いたプロットに日本人の心にすとんと落ちる感じのオチが利いて面白かった。所収の「背後の虎」は「ウルフガイ燃えろ狼男」ファンなら(あんな映画にファンがいるなら)必読。
サマセット・モーム「ジゴロとジゴレット・モーム傑作選」読了。先の「英国諜報員アシェデン」はいまいちだったけど、これは粒揃いで素晴らしかった。全編いずれ劣らず胸を打つことうけあい。既婚者なら「サナトリウム」と「ジゴロとジゴレット」は読んどいたほうがいい。モームはいいぞ!
重機動メカ
シネフィルwowow「トレインスポッティング」。賛否両論ある映画だけど自分は面白かった。映像も音楽も文句なしカッコいい。イワン・マクレガーはいまやアホ好きのするスターウォーズよりこっちのチンピラのが絶対いい。
ザ・シネマ「超高層プロフェッショナル」。今回はリー・メジャースを600万ドルの男よろしく太一ちゃんが吹き替えてる版。サンテレビのアフタヌーンシアター枠が似合う見るからに小品だけど、まったく無駄のない構成で、冗談でなく何度観ても面白い。劇中、ボスが動かないと部下も動かないのは自明の理で納得。
時代劇専門チャンネル「赤胴鈴之助」。キャラクターのおかげさま、見るからに人気がないアニメだけど東京ムービーでは珍しくと言うか、さすが高畑勲が入ってるだけあって唯一と言って良いくらいシリーズ構成がちゃんとして面白いので是非みなさん観ていただきたい。小田部に河内に荒木に近藤も入った作画も文句なし。
ちなみに当時、赤胴真空斬りの完成を持って最終回を迎えたと思った翌週からチャンネルを変えてアストロガンガーを観ていたのはたぶんワタシひとりだけ。
高畑勲と言えばこないだ追悼で「火垂るの墓」をやってたけど、あれは野坂昭如のもんで両者に失礼でないかと思ったのと、あとチエちゃんくらい流して明るく送ってやるくらいの度量はなかったのかと思ったと言うハナシ。
スターチャンネル「ポーカーフェイス」。ギャンブラードロン42歳。主演と製作がドロンでラストシーンまでやっぱりいつものドロン映画。ギャンブラーなのにプロの殺し屋たちをひとひねりのドロンってどないやねん。でもまあカッコいいので許す。
キッズステーション「伝説巨人イデオン」。久しぶりに全話通して観ようかと思ったけど、覚えてたひゃくばいくらい面白くないのでいきなり最後まで観る自信がない。見たまんま足が弱点のドグマックもどないやねん。お前はガ・キーンか。やっぱりイデオンはウルトラに傑作の劇場版だけ観てれば良いのかしらん。
東映チャンネル「タイガーマスク」。こちらは観るたび間違いなく面白い。今週から始まった覆面ワールドリーグ戦の盛り上がりも素晴らしく、あえて言うなら窪先生の作画で観たかったくらい。
窪先生と言えば朝から新しい鬼太郎やってたけど、猫娘とか恐ろしく素人くさい絵でびっくりした。ラノベのキャラみたいな低血圧な鬼太郎もどないやねん。
うおんちっと
日本映画専門チャンネル「マイマイ新子と千年の魔法」。「この世界の片隅で」の片渕監督作品と言うことで観てみた。起こりうる事件が子供レベルなぶん「この世界の片隅で」ほど圧倒されなかったけど、過去の世界を違和感なくさらりと描いたうえ複雑なプロットを一本にまとめる力量はやっぱり凄い。あと絵はこっちのが好み。もう劇場アニメはこの監督にやらせといたらいいのではないか。
しかし野田圭一の声が全然まったく野田圭一に聞こえなかったのはいささかショックだった。そらセンチメンタルジャーニーからでも20年だもんよ。
そう言えば「この世界の片隅で」を実写化すると聞いたけど、アッパレ戦国のときも同じくバカの思考は度し難いと言うか、NHKの朝ドラレベルに堕するのは目に見えてるけど、戦艦大和とか原爆ドームとか、それこそ無数にある背景メインのシーンを一体どう処理するつもりなのか(そしてどれほど失敗するのか)はむしろ気になる。
いまやってるプリキュアがシリーズでも類を見ないくらいグロテスクかつ胡散臭いと思ったら監督が佐藤順一ですげえ納得したと言うハナシ。