僕はロマンティックな男だ。だからいつも損をする

コーマック・マッカーシーザ・ロード」読了。終末後の世界を旅するエスエフでも「吸血鬼」とか「地獄のハイウェイ」なんかの古典が孕んだのんきさが微塵もないのは流石いまどきの作品で、さらに「渚にて」みたく人類が尊厳を保って死滅するのはいまやナンセンスらしくて寂しい気分になる。全編まったく高揚のない筆致は魅力的。でも世評ほど面白いとは思わなかった。

平井和正「虎は暗闇より」読了。本邦のエスエフにしては気の利いたプロットに日本人の心にすとんと落ちる感じのオチが利いて面白かった。所収の「背後の虎」は「ウルフガイ燃えろ狼男」ファンなら(あんな映画にファンがいるなら)必読。

サマセット・モーム「ジゴロとジゴレット・モーム傑作選」読了。先の「英国諜報員アシェデン」はいまいちだったけど、これは粒揃いで素晴らしかった。全編いずれ劣らず胸を打つことうけあい。既婚者なら「サナトリウム」と「ジゴロとジゴレット」は読んどいたほうがいい。モームはいいぞ!