二千五百ドゥブルゾンではどうですな

ボリス・ヴィアン「日々の泡」読了。むかし読んだブルトンの「溶ける魚」のがまだしも理解できるくらいの前衛小説で、それもそのはず作者は無理から読者に理解されないよう書いていたらしい。最初からそんな底意地の悪い小説と分かってたら読まなかったところだけど、表紙のあらすじが確信犯的に「人生の不条理への怒りと自由奔放な幻想を結晶させた永遠の青春小説・20世紀でもっとも悲痛な恋愛小説」とあったもんで、すっかり騙されてしまったような按配。とは言え読後感はそんなに悪くなく、むしろ恋人の愛情は背景が不条理な世界観だからこそなお精彩を放っていたように思う。胸中に蓮の花が咲く奇病に冒されたワイフのために初の労働に挑む主人公、そして巻末のハツカネズミと猫の顛末に涙。