浴場の情景はまったくダンテ的です

ドストエフスキー死の家の記録」読了。作者自身のシベリア流刑の体験を基にしたとんでもない獄中記。とにかく長かった。読書は通勤電車に限ってのことと、間に大仕事が入ってしばらく中断したとは言え、読了までひと月近くもかかってしまった。ドフトエフスキーの緻密な観察眼で活写される囚人たち、その人間性の本質の普遍性は150年を経てなお生々しい。苛烈なはずの獄中記でありながら、随所に織り込まれるユーモラスな側面も楽しい。そしてやたらと長かったぶん、作者が出獄する終幕のカタルシスも最高。ロシア文学の最高傑作の誉れに異論のない傑作。