ニム

ムージル「愛の完成・静かなヴェロニカの誘惑」読了。観念的にもほどがある筆致で、大袈裟でなくただの一行すらナニを言ってるのかさっぱり分からなかった。この際ワタシのアタマが悪いのは置いといて、なんたって訳者の古井由吉氏が巻末で「読者にはたいそう難解な作品を提供したように思われる」とわざわざ断っているくらい。そんなウルトラに消化不良のまま、しかし驚くほどスムーズに及んだ読後感は悪くなかったどころか、何度でも反芻しようと思うくらい気に入ってしまった。映画で言えば何度観てもサッパリでも何度でも観たくなる「去年マリエンバートで」が該当するけど、これは「訳者渾身の翻訳」の謳い文句の面目躍如なのかしらん。