カンを鋭くするためにはいちど無念無想に落ちねばならない

東映チャンネル「サーキットの狼」。この映画、飛鳥ミノルがキングワルダーみたいなパンチの倉石功だったり、千葉治郎演じる沖田がレースでもゼットに乗ってたり、スポンサーとは言えロッテのクールミントガムがフィーチャーされすぎてたり、運転席の背景がサイクロン号の変身シーンのそれと同じだったり、特別出演の池沢さとしがへたくそな漫画のひゃくまんばい演技が上手かったり、なんたって腐ってもレース映画でレースの顛末が描かれなかったりと、原作を読んでるとことさらツッコミどころの枚挙にいとまがない珍品だれど、ときのスーパーカーブームを正しく理解してるのって実写とアニメを問わず知る限りこの「サーキットの狼」と、ジャッカーのスーパーカー回だけではないかと思う(激突!スーパーカークイズは含みません)。あと風吹裕矢のキャラクターは原作より映画のが好感度がひゃくまんばい高い。ゴーゴー喫茶のシーンがいかにもそれらしい、東映チャンネルで「怪猫トルコ風呂」の放送を期してやまない山口和彦監督で1977年。「栄光のル・マン」や「グラン・プリ」と比べるのはなしの方向で、公道のカーレースやチキン・ランは迫力があって必見。

川端康成「抒情歌・禽獣」読了。旧仮名遣いの小説と戯曲は極力避けてる自分が今回前者の小説を読んでみたのは目につくところの川端康成の小説を読み尽くしたからで、読んで見るとこれが結構読みやすくてびっくり。そして昭和十年前後に上梓された短編集がいずれ劣らず鮮烈で二度びっくり。表題作の「抒情歌」と「二十歳」が面白かった。