修羅雪姫

「サキ短編集」読了。怪奇譚から喜劇まで、いずれも100年位前の作品ばかりだけど、まったく古さを感じさせないモダンな筆致や構想に驚かされる。ちなみに今回読んだ新潮文庫版は初版が昭和33年。いずれ劣らず読ませるなか、上村一夫が「灰色の森」のタイトルで劇画化した「狼少年」と、こっちもいけうち誠一白土三平そっくりの絵でコミカライズした「おせっかい」の二編の怪奇譚がなかんずく面白かった。あと「セルノグラッツの狼」から、「伝説なんてわけなく作れるものなんだから、たいして値打ちのあるものじゃないのよ」のセリフは、当節のアニメやトクサツに頻出するそれを予見しているにもほどがある。サキは135編に及ぶ短編を各社競作で抜粋して何冊か出てるらしいんで、これはほかの作品もぜひ読んでみたい。できれば新訳も待たれる。