彼の行くところ砕けざる魔境はない

小栗虫太郎「人外魔境」読了。全13編からなるアンソロジーで、尋常ならざる空想力と広大無辺な知識は圧巻の一語。怪獣バカが期待した前世紀の珍獣・奇獣はほとんど登場しなかったけど、現在でも遜色ないモダンでスリリングな筆致に戦前の綺談であることを忘れて読み耽ってしまう。なかんずく「水棲人(インコラ・パルストリス)」が出色の面白さだった。手法がまんま同じの「世界の怪獣」でお馴染み中岡俊哉先生は言わずもがな、昭和に活躍した漫画家はみんな読んでると思ってまあ間違いない気が。火礁海をアーラン・アーラン、死の番卒をセレーノ・デ・モルトに巨獣の墓場がセブルクルム・ルクジなどなど、固有名詞に振られるカッコいいルビの出典も本書ではないか。知る限り成功してんのは伊藤岳彦くらいのもんだろうけど。

続いて「鉄鋼王カーネギー自伝」。カーネギーと言えばナポレオン・ヒル・プログラムって胡散臭い自己啓発セミナーはまだやってんのかしらん。