マックスの弱点はタコのオツム

vakisim2005-09-07

悪魔の手のひらよろしく放映時間の定まらないかみちゅ!の海水浴のハナシを送ってくれたKKK氏の厚意のついでに「ウルトラマンマックス」も初めて見たが、想像したひゃくおくまんばいカスだった。どうせダメなら新たな地平を目指してあさっての方向へ飛んでったネクサスのがまだ印象が良い。とは言えいまどきウルトラマンなんかネクサスもマックスもどうでもいいが。ところで往年のウルトラ怪獣から早速引っ張り出されていたウミウシみたいで気持ち悪いエレキングが、みんなホンマに好きなんかい?

「集団見合いで大ドンデン!」は、バブル経済華やかなりし当時、他局で人気のあった集団見合い番組へのアイロニーをコミカルな作劇に埋没させた一篇。ロケーションを二転三転させる岡本演出も手間がかかって見ごたえ充分。リアルコメディアンのブッチャーズが変身するダブルノイドは、ユニークなキャラクターを具え、甲殻類の怪物の例に漏れないカッコいいバイオノイドになった。今回から着ぐるみになったギバ様に、レオ・メンゲッティが雷忍ワイルドよろしく降板したかと焦ったのも懐かしい。

「美少年小太郎一座の怪人」は、シリーズ初の女性作家、鷲山京子の脚本。ユニバーサル版「オペラの怪人」の父と子版のイメージで、異例のキャスティングともプレミアムな佳作に仕上がっている、ジバンとカブキノイドの激闘も最高にカッコいいマイフェイバリットな一編。東映黄金期を支えた時代劇俳優の故・東千代之介が、倉間鉄山役でも披露した日舞家元の実力をここでも発揮する。カブキノイドは楽しいデザインや造型に似合ったキャラクターが魅力で、丸山詠二の吹き替えを得て、豪華キャスティングにひけをとらない千両役者ならぬ千両怪物ぶりを見せた。

「真夏の夜のニンジャ合戦」のトピックスは、シリーズ前作「世界忍者戦ジライヤ」のメインライターだった高久進の脚本のもと、役名もそのままスピンオフした山地学役の橋本巧(なんか声は雷門ケン坊そっくり)の出演と、橋本自身が披露する戸隠忍法アクションに尽きる。三ツ村演出はワンカットで対バイオロン法を謳うジバンやシノビノイドとの剣劇も最高にカッコいい。バイオ忍者・シノビノイドは雨宮慶太お得意の生物的なメカニックを侍・忍者装束でオブラートしたお馴染みのイメージで、造型とも文句なしの一体。

「パールの涙は金色の海」には、藤井邦夫にしては硬軟のバランスの良いシナリオで、真珠を通して描かれる日下翔平のイノセントなキャラクターが魅力の一編。三ツ村演出も大井競馬場の攻防はちゃんと2対1のタイミングを見せるのが凄いが、曇天下の決戦の一部をセット撮影でフォローしているのが惜しい。醜怪さだけが強調され、やがて東映怪物の主流になるクリーチャー然としたディストノイドは、バイオノイドでも面白みがない怪物。

ガルボに咲いた千年ハス」は、これも鷲山京子が思い入れたっぷりに狡猾なガルボを描いている。ジバンとガルボの2度目の正面対決の見応えも充分。ガルボ捨て駒になるライギョノイドは、漫画的なフォルムがかえって不気味な印象を残す。

シリーズ2度目の山場になる「壮絶!ジバン死す」はサブタイトルに偽りない、ナレーターの大平透もエキサイトしすぎて(いなかっぺ大将の大柿先生みたいな)ギャグ声になるほどのバイオレンス・アクション編。ヒーローの死をこれほど徹底的に描いたのは「機動刑事ジバン」が現在まで唯一であり、落日に無残に砕け散るジバンのシルエットは美しくすらある。満身創痍でなお強敵に挑むジバンに視聴者はあるべきヒーローの姿を見る。このあたりの演出は小西監督自身がジャンパーソンでリメイクしている。

「パーフェクトジバンだ!」は、ほとんどオカルトのジバン復活のプログラムは蛇足に過ぎず、岡本演出が徹底して描く鋼の城・パーフェクトジバンの強さに陶酔するが正解。オートデリンガーの問答無用のバイオレンスは、ロボコップ出典のジバンの真骨頂と言える。このオートデリンガーはメイン兵器の貫禄で、現在の豪華なりきり玩具に先鞭をつける多彩なギミックの玩具が発売されたが、ニードリッガーとパワーブレイカーはなぜか廉価版すら発売されなかった(のはず)。またパーフェクトジバン本体も発売は(オモチャに興味のない有馬記念も持っている)「超電装・パーフェクトジバン」のみで、それがかえってプレミアムな印象をつけた。ちなみに本編は最終回やクリスマス決戦と並ぶ視聴率を獲得して、イベント編の面目も躍如だった。

「夢見るチャンバラ怪物!」で特筆すべきは、生まれつきの衝動を具える怪物・チャンバラノイドがジバンに敗れ、しかし叶わぬ夢に殉じて幸いな点にある。ヤギノイドも怪物のそれを愉快犯の心理となぞらえば、やがて刑事ドラマで頭角をあらわす扇沢脚本の本領発揮の一篇でもある。岡本演出にも開巻から終幕まで一辺のムダなく、完全に主役扱いだったチャンバラノイドも、高橋利道がコミカルなキャラクターと立ち回りとも好演している。チャンバラノイドはカブトムシをモチーフに天狗の意匠を盛りこんだ雨宮慶太の傑作デザインで、その魅力を再現した造型も文句なし第一級の怪物と言える。ヒーロー番組ファン必見の傑作。勝蓮和尚を髣髴させる役回りで長沢大もゲスト出演している。

「私は世界一の美女!?」はクイーンコスモがその登場以来、はじめて主役になるハナシ。小西通雄が描き、朝倉陽子が体当たりで演じるゴーレムコスモとジバンの一騎打ちがとにかく圧巻。既存の生物を再構築したカメノイドは雨宮怪物の真骨頂だと思う。

見れば誰でも男・清志郎が好きになる「故郷だよ、おっ母さん!」は、扇澤脚本が70年代ドラマのテイストを蓄えて、都会に挫折した青春像をコミカルに描いた快作。キノコノイドはグロテスク1歩手前のデザインと造形で、はずれのないキノコ怪人でも最高峰の一体に完成している。