復讐の弾道

西村賢太「小説にすがりつきたい夜もある」読了。なにしろ本屋に行かないもんで、氏の本を新刊で買ったのは実は初めて。しかし向後はすべて新刊で揃えて、些少でも売り上げに貢献させていただきたい。そう決意させるくらい読み応えのあるエッセイ集。例によっての滔滔たる筆致には羨望を越えて嫉妬心すら湧いてくる。こちらもいつも通りの風俗ネタや藤澤清造ネタに挟んで、母校の小学校の文集に寄せた朴訥な一文が素晴らしい。あと氏のお気に入りの作家に意外に並んだ大薮春彦の作に「この人の作こそ、どれか一編を考えるのは無駄な努力であるが」は至極ごもっとも。ユーモアも文句なしの、同い年であること誇らしく思う、いまいちばん好きな作家と言って問題ない。