あらこんなところにお葉書が

イマジカ「処女の生血」。ルーマニアで全滅した処女を求めてドラキュラ伯爵が執事に唆されてイタリア行と洒落こむ、ルーマニアの人が聞いたら怒りそうな映画。銀幕のドラキュラ人気を確固たるものにした英国ハマーのドラキュラって、シリーズが進むたびに弱体化してどんどん情けなくなってるのは吸血鬼ファンならご存知の通りだけど、この「処女の生血」は(ハマーじゃないけど)その流れの頂点を極めたみたいな展開で、とにかくドラキュラ伯爵が弱い!弱すぎる!剽悍な下男は無論、死期を目前にしたヴィットリオ・デ・シーカを含んで、この映画に登場する誰よりも弱いのではなかろうかと思うほど。なんたって伯爵のいちばんの見せ場が非処女の血を間違って吸ってしまって、食中毒を起こして風呂場で悶絶するシーンってドラキュラ的にどうなのよ?でも面白くないかと言うと決してそんなことはなく、むしろそんな脆弱な伯爵の一挙一動から目が離せない、実に愛すべきドラキュラ映画に仕上がっていると思う。機会があれば必見。「悪魔のはらわた」のポール・モリセイ監督で1974年。ポランスキー監督が(氏が撮る映画同様)とても鬱陶しい農夫役でカメオ出演している。

ちなみに食中毒を起こした伯爵に郷田ほずみの知恵袋おばさんの「血液型の違う血を吸って蚊は腹を壊さないのか?」を思い出したのは余談。